高配当株ETFの選択「VYMとHDVの組み合わせ」
VYMとHDVを組み合わせて運用することの是非を考えてみます。最初に要点をまとめると以下の通りです。
- HDVを持つ投資家がVYMを組み合わせることで、ポートフォリオの配当利回りは減るものの、トータルのパフォーマンスは良くなる可能性
- VYMを持つ投資家がHDVを組み合わせることで、ポートフォリオの配当利回りは増えるものの、トータルのパフォーマンスは悪くなる可能性
- 「VYMとHDVを組み合わせることでセクターの比率が」という話は無視して良い。セクター比率は将来のリバランスで変わるため
VYMと他の高配当株ETFの組み合わせについては以下の記事も併せてご覧ください。
さて、結論から述べると、「VYMを保有する投資家さんが、分配金利回り以外の目的でHDVを買うメリットは無く、逆にデメリットが多くなるのでは」と個人的には考えています。
最初にVYMとHDVの違いを確認すると以下の通りです。
- VYM:配当利回りと持続性を満たした銘柄をピックアップして、市場の時価総額順に組み合わせる
- HDV:配当利回りと持続性を満たした銘柄をピックアップして、配当の多い順に組み合わせる
どちらのETFも企業の財務等を見ながら銘柄を選んでいますが、HDVのほうがより少ない銘柄に絞り込み、かつ大胆なポートフォリオの組み換えを行っています。
一方、VYMのほうがよりS&P500(マーケットポートフォリオ)に近く、市場連動性も高くなっています(より「普通の」インデックスファンドっぽいです)。
配当持続性を考慮するのはどちらも同じで、ポートフォリオの組み方で大きく異なるのがVYMとHDVの違いですね。
さて、過去のパフォーマンスを見ると、今までの正解はVYMだと個人的には思っています。HDVは配当利回りこそVYMよりも高いものの、トータルリターンやコロナショックでの下落ではVYMに劣りました。
また、過去5年間の相場のソルティノレシオを見ても、より分配金を重視するHDVのほうが低くなっています。この傾向は、HDVのほうが下落相場で大きな損を出しやすい可能性を暗示します(以下の図は株価だけてみており、トータルリターンではないです)。
これらの点から考慮すると、VYMとHDVの組み合わせには以下のような可能性があると考えています。
- HDVを持つ投資家がVYMを組み合わせることで、ポートフォリオの配当利回りは減るものの、トータルのパフォーマンスは良くなる可能性
- VYMを持つ投資家がHDVを組み合わせることで、ポートフォリオの配当利回りは増えるものの、トータルのパフォーマンスは悪くなる可能性
ちなみに、VYMとHDVは株価の相関性(0.96。2011年以降の60日移動平均)が高いので、両者を組み合わせることでリスクを軽減する効果はほとんどありません。両者を組み合わせてもつことで、より多く保有した側の特徴が強く出るだけです。
ネットでよく見かけるセクター分散の話は無視してかまいません。なぜなら、セクター比率はETF内部のリバランスで変わってしまうからです。
というわけで、個人的な結論は「すでにVYMを持っているなら、HDVは組み合わせなくても良いのでは」といったところでした。それでも「欲しい・買いたい」という感情に抗うのは難しいので、その場合には上述のデメリット承知で買われると良いと思います。