VYMの配当再投資戦略はなぜ否定的に受け止められるの?
VYMに限った話ではありませんが、「高配当株ETFを買って、配当再投資で資産を増やす」という戦略はSNSで否定的にみられることがしばしばあります。
ここでは改めて、何が問題だとされるか、基本的なところを考えてみましょう。
主に言われる点は以下の3つです。
- 海外ETFは購入手数料がかかる分だけ不利
- 配当(分配金)に米国と日本でそれぞれ課税され、受け取れる配当金が少なくなるため不利
- 米国は市場ポートフォリオが強いので、そもそも高配当株ETFでは勝てない
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問題1:購入手数料の影響
2021年7月現在、ネット証券の手数料無料化(ノーロード化)が進んだ投資信託と異なり、海外ETFは未だ購入手数料のかかる商品です。
SBI証券や楽天証券では一部の人気ファンドを「買い付け手数料無料」に設定していますが、VYMやHDV、SPYD等の人気高配当株ファンドは対象外です。
手数料がかかると、その分投資できるお金が減り、将来得られるリターンも減ります。
そのような手数料を支払うよりかはノーロードのインデックスファンドを買ったほうがいいですよね、ってお話です。
ちなみにVYMは楽天VYM(楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド)やSBIVYM(SBI・V・全米株式インデックス・ファンド)があるので、一応手数料無料で投資することも可能です(その代わり、分配金は貰えませんが。。)。
問題2:配当課税の影響
海外ETFには米国での課税(10%)と日本国内での課税(20.315%)がかかるので、受け取れる配当金は実際の利回りよりも少なくなります。受け取れる配当が少なくなるので、複利運用上効率が悪くなるんですよね。
その点で、やはり無配当のインデックスファンドのほうが有利ですよね、ってよく言われますね。
問題3:米国は市場ポートフォリオが強い
米国は市場ポートフォリオ(マーケットポートフォリオ)が強く、そこから乖離するほど運用効率が悪くなりやすいようです。
株式や債券など世界中のあらゆる市場にあるリスク資産を、それぞれの時価総額の比率に応じて投資したと仮定したポートフォリオのこと。「市場ポートフォリオ」とも言います。米国の経済学者、ウィリアム・シャープ氏らが提唱した「資本資産価格モデル」では、最も効率性の高いポートフォリオだと定義され、パッシブ運用やインデックス運用の理論的な裏付けになりました。
特にGAFAMが代表的な銘柄になってからは、この5銘柄の値上がり分が大きく、バリュー株や配当株は劣後しやすい傾向にあります。
そのため、相対的に運用成績の悪いVYMやその他の高配当株ETFに投資するのは非効率だと常々指摘されやすいです。
米国は世界の株式市場の中心なので、いろいろな投資家がしのぎを削っている結果だと個人的には考えています。
デメリットは承知の上で
合理性を追求するなら、高配当株ETFへの投資は避けたほうが良いです。残念ながら、GAFAMが強いうちは、高配当株ETFが長期的に優位になることはほぼ無いと思います。
ですが、「投資を楽しみたい」といった気持ちが1%でもあるのでしたら、好きなほうを選べばよいのでは?とは個人的に常々思うところです。
ちなみに、無配のインデックスファンドを一定分ずつ売って、その収益で生活を支える考え方もあります。
FIREであっても、老後の生活費であっても、必ずしも配当で賄う必要はない(必要な分だけ換金すればいい)点を知っておけば、自身に最適な運用をより選びやすくなると思います。